「夜逃げ屋」として知られる移転支援業者の中には、ゴミ屋敷からの脱出を依頼されるケースも少なくありません。依頼主の多くは、山積みになったゴミのせいでまともな引越し業者に頼むことができず、かといって自分ではどうすることもできない、まさに袋小路に迷い込んだ人々です。彼らは夜逃げを通じて、物理的なゴミだけでなく、自分を縛り付けてきた過去の人間関係や借金からも逃れようとします。作業は深夜、数時間の短い間に行われます。ゴミ屋敷からの夜逃げは、通常の引越しよりも遥かに過酷です。どこに何があるか分からないゴミの山の中から、通帳や貴重品を掘り出す作業は困難を極め、腐敗臭や害虫の中で作業員も体力を削られます。依頼主は、作業中ずっと部屋の隅で震えていることもあれば、逆に全てを諦めたような表情でぼんやりとゴミの山を見つめていることもあります。彼らにとって、この夜逃げは「人生の再スタート」をかけたギャンブルのようなものです。私たちは依頼主が指定した最小限の荷物だけを運び出し、残りのゴミはそのままにして立ち去ります。それは、オーナー様や近隣住民に対しては極めて不義理な行為ですが、依頼主にとってはそうしなければ生き延びられないという切実な事情があるのも事実です。しかし、ゴミを置き去りにして夜逃げした後の生活が、必ずしも好転するとは限りません。逃げた先で再び孤独に陥り、新しい部屋を再びゴミ屋敷にしてしまう「リバウンド」が非常に多いのです。私たちは荷物を運ぶことはできますが、彼らの心の傷まで運ぶことはできません。ゴミ屋敷から夜逃げするという選択は、一時の解放感をもたらしますが、根本的な解決からは遠く離れています。残されたゴミの山は、逃げ出した本人の心に一生消えない負い目として残り続けるでしょう。私たちはその凄惨な現場を立ち去るたびに、この国の福祉や支援の網から漏れてしまった人々の多さを実感し、やるせない気持ちになります。
夜逃げ支援業者が明かすゴミ屋敷からの脱出と過酷な現実