親や親族が亡くなり、その実家がゴミ屋敷状態であったという現実に直面する相続人は少なくありません。故人を偲ぶ間もなく、目の前には清掃費用という経済的な問題と、精神的な重圧が立ちはだかります。このような状況で、「相続放棄」という選択肢を検討する人は少なくありません。相続放棄は、故人の残した全ての財産(プラスの財産もマイナスの財産も含む)を一切引き継がないという法的な手続きであり、ゴミ屋敷の清掃費用やそれに伴う負債から逃れる有効な手段となり得ます。しかし、相続放棄をした場合でも、税金申告に関して注意すべき点がいくつか存在します。まず、相続放棄をした場合、その相続人は初めから相続人ではなかったものとみなされるため、原則として相続税の納税義務は発生しません。故人の残した財産がゴミ屋敷しかなく、それが負の遺産であったとしても、相続放棄をすればその負債も引き継がないため、相続税の心配は不要となるでしょう。しかし、相続放棄をする前に、故人の財産の一部を処分したり、受け取ったりしてしまった場合、「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。この場合、相続税の納税義務が発生することになります。ゴミ屋敷の遺品整理の過程で、故人の現金や貴重品、形見分けの品などを不用意に手にしてしまうと、後々大きな問題となるため注意が必要です。相続放棄を検討している間は、故人の財産には一切手を付けないようにしましょう。また、相続税の申告期間は、相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。もし、相続放棄の手続きがこの期間内に完了しない場合、一旦は相続人として相続税の申告義務が生じる可能性があります。その場合、期限内に申告を行い、納税猶予の手続きを取るなど、税務署と適切なコミュニケーションを取る必要があります。相続放棄が確定すれば、改めて相続税の納税義務はなくなるため、過払い分の還付を受けることができますが、一時的な負担が生じる可能性はあります。さらに、故人が不動産を所有していた場合、相続放棄をしたとしても、その不動産が次の順位の相続人に引き継がれるまでは、民法上の「相続財産管理人」として、その不動産の管理責任を負う場合があります。この場合、固定資産税などの税金が発生し続ける可能性があり、誰がその費用を負担するのかが問題となることがあります。
ゴミ屋敷の相続放棄と税金申告の注意点