故人が残した実家がゴミ屋敷と化していた場合、相続人にとってその問題は非常に重く、多岐にわたります。清掃費用、精神的負担、そして何よりも「相続」という法的な問題が複雑に絡み合います。このような状況下で、多くの人が検討するのが「相続放棄」と「不動産売却」という二つの選択肢です。それぞれのメリットとデメリットを理解し、自身の状況に合わせた最適な選択をすることが重要となります。まず、「相続放棄」は、故人の残した全ての財産(プラスの財産もマイナスの財産も含む)を一切引き継がないという法的な手続きです。ゴミ屋敷の清掃費用が高額であり、故人に他に目立った財産がない、あるいは負債が多いといった場合に有効な手段となります。相続放棄が認められれば、ゴミ屋敷の清掃費用や固定資産税などの負担から解放されます。しかし、一度相続放棄をすると、故人の預貯金や他の不動産など、プラスの財産も一切相続できなくなります。また、相続放棄には「自己のために相続があったことを知った時から3ヶ月以内」という期間制限があり、期間内に手続きを完了させる必要があります。次に「不動産売却」という選択肢です。ゴミ屋敷状態の不動産であっても、売却することは可能です。ただし、通常の物件よりも売却価格が低くなる傾向があり、売却前に清掃が必要となるケースも少なくありません。しかし、もしゴミ屋敷の立地が良く、土地としての価値が高い場合などは、清掃費用を差し引いても売却益が得られる可能性があります。この場合、相続放棄をするよりも、売却によって得た資金で清掃費用やその他の負債を弁済し、残りを相続するという道も開けます。不動産売却を選択するメリットは、ゴミ屋敷という負の遺産を処分し、現金化することで、他の相続財産と合わせて有効活用できる点です。デメリットとしては、売却までの手間や時間がかかること、清掃費用や不動産仲介手数料などの諸費用が発生すること、そして希望通りの価格で売れない可能性があることなどが挙げられます。どちらの選択肢も、メリットとデメリットが存在し、個々の状況によって最適な判断は異なります。
ゴミ屋敷の相続放棄と不動産売却の選択