キッチンにおけるゴミ屋敷問題の真の恐ろしさは、目に見えるゴミの山を取り除いた後に、ようやく姿を現します。それは、長年ゴミの下に隠されていた床材や土台の「腐食」という構造的な破壊です。キッチンのゴミ屋敷では、シンクからの水漏れや、放置された生ゴミから漏れ出した腐敗液、さらには結露による水分が、ゴミの層に吸収され、逃げ場を失ったまま長期間滞留します。これにより、フローリングは変色し、ふかふかと柔らかくなり、ついには底が抜けるほど脆くなってしまいます。私たちがゴミを撤去した際、一見するとただの汚れに見えた床が、実はボロボロに腐っており、作業員が一歩足を踏み出した瞬間に床下に突き抜けるという事故も珍しくありません。この湿った腐食箇所は、白アリの絶好の餌場となり、キッチンの土台だけでなく、建物全体の柱や梁にまで被害が拡大しているケースも多々あります。また、ゴミの重みによって床板がたわみ、排水管が歪んでさらに水漏れが悪化するという悪循環も発生します。キッチンのゴミ屋敷を解決することは、単に表面を掃除するだけでは不十分であり、建物としての「健康状態」を診断し、必要な修復を行う「建築的な視点」が不可欠です。私たちは、ゴミを運び出した後に必ず床の状態を詳細に調査し、必要であれば床板を剥がして土台の消毒や補強を提案します。湿気を吸い込んだゴミの下からは、カビやキノコが発生していることもあり、これらが放つ胞子は住人の健康を著しく害するため、特殊な防カビ処理も欠かせません。ゴミ屋敷のキッチンは、文字通り「家が悲鳴を上げている場所」であり、その腐食の連鎖を断ち切ることは、住人の財産を守るだけでなく、崩壊しつつあった生活の基盤を物理的に作り直す作業でもあります。ガランとしたキッチンに新しい床板が貼られ、水漏れのない配管が整ったとき、家は再び「住まい」としての魂を取り戻します。物理的な腐敗を取り除くことは、住人の心に染み付いた絶望を取り除くことと表裏一体であり、私たちは大工や設備業者のような専門知識も総動員しながら、キッチンという土台を、一から再建していきます。
腐食の連鎖を断切るキッチンの床下調査と修復