あの日、ポストに届いた一通の内容証明郵便が、私の生活の全てを終わらせる死刑宣告だった。震える手で封を切ると、そこには事務的な言葉で、私の部屋が「不衛生極まりない状態」であり、「建物の保存に重大な支障をきたしている」ため、一ヶ月以内に部屋を明け渡せという最後通牒が記されていた。いつからこうなったのか、自分でも分からない。最初はただ、仕事で疲れ果てて、ゴミ袋を出すのが一度遅れただけだった。それが二度、三度と重なり、いつしか床が見えなくなり、ゴミの隙間で丸まって眠るのが当たり前になっていた。臭いについては、自分の鼻が麻痺していたのかもしれない。管理会社の人から何度か電話があったし、ドアの下に警告の紙が挟まれていたのも知っていた。でも、それを開けるのが怖くて、ゴミの山の中に埋めて見なかったことにした。私は自分を守るためにゴミを積み上げていたつもりだったけれど、実際には自分を追い詰める牢獄を作っていただけだった。契約解除という言葉が突きつけられて、ようやく私は、自分が住む場所を失うという恐怖をリアルに感じた。近所の不動産屋に行こうとしても、今のこの部屋の状況を思えば、次の部屋なんて借りられるはずがない。もし追い出されたら、私は路上で暮らすしかないのだろうか。家主さんや近所の人たちには、多大な迷惑をかけているという自覚はある。でも、どこから手を付けていいか分からない絶望感が、私の体を金縛りのように縛り付ける。一ヶ月なんて、あっという間だ。ゴミを全部捨てるエネルギーなんて、今の私には一欠片も残っていない。でも、法的な手続きは着々と進んでいるらしく、次は裁判所から書類が届くと言われた。自分が壊してしまったのは、部屋だけじゃない。社会との繋がりや、人間としての最低限の尊厳まで、私はゴミと一緒に積み上げて、台無しにしてしまった。あの手紙を無視し続けて、信頼関係なんてとうの昔に粉々に砕け散っていたんだ。今はただ、このゴミの山の中で、いつ来るか分からない終わりの日を待つことしかできない。自業自得だという声が、どこからか聞こえてくる。その通りだ。私は自分の人生を、自分の部屋と一緒に、取り返しのつかない形で壊してしまったのだ。